第4章 ●気になる●
「夏油、放っとけって、そんなやつ。それより、この味噌汁美味しい。」
硝子が味噌汁を褒めてくれた。
「トーストにお味噌汁って合わないかもだけど、硝子二日酔いだったから、お味噌汁がいいかと思って。」
「へえ、そんな事までねぇ。どう?五条、おいしい?」
硝子が五条に聞いた。
「スッゲェ美味い。ところで、何も出来ない男ってどういうやつ?」
トーストをかじりながら五条が聞いた。
「悟、やめないか。失礼だろう。」
夏油がまた五条をたしなめた。
「いいよ、夏油。別に隠す事でもないから。何も出来ない男っていうのは私のはとこの事。」
「はとこ?って言ったら親同士が従兄弟って事だよな?」
五条が言った。
「そう。私の母親が育児放棄だったから、小さい時からそのはとこの家に預けられてたの。そして…」
それからの経緯を話した。
母親とはとこが逃げたけど、母親が病気になって戻ってきた事。
はとこの世話をしながら暮らすようになった事。
再びはとこが女と逃げた事。
その女が自分の担任だった事。
「大変だったな。」
話を聞いて最初に口を開いたのは夏油だった。
「気の毒。」
硝子は味噌汁を飲むのをやめていた。
「で、七海とはどこで知り合ったの?」
暗くなった雰囲気を変えたのは五条の質問だった。
「えっと、建人とは昔から家族ぐるみの付き合いがあって。それで、幼馴染だったの。だからまあ、自然に付き合う事になった…みたいな。」
大筋はそれで間違ってない。
「ふーん、そっかぁ。」
五条はそう言うと、食事を再開した。
それを見て、みんなもそれに倣った。
「あー美味かったぁ。」
食後のコーヒーを飲み終え、五条が床にのけぞって背伸びをした。
「片付け手伝うよ。」
夏油は食べ終えた食器を運んでくれた。
硝子はベランダで一服中。
「夏油、もういいよ。後はやるから。帰って寝て。」
「ありがとう、恋。悟、帰ろうか。」
「なあ?恋、ってお菓子とかも作れたりする?」