第1章 始まる
私は身長がすごく低い。
だからなのか、背が高い男に弱い。
五条は私よりも40センチ以上高い様に思う。
立ち姿が様になっているというか、何というか。
制服もすごく似合ってて着こなしてる。
それにあの笑顔がとても印象的だった。
「さて、任務の説明をする。」
「えぇー、朝っぱらから任務っすかぁ?」
先生の言葉に五条が反論する。
手を頭の後ろで組み、口を尖らせて。
まるで小さな子供みたいに。
そういう所が何だかかわいく思えてくる。
私…何考えてるんだろ。
一人不毛な妄想にふけっていた事を今更ながら恥じた。
そして任務の説明をしている先生の声に集中した。
「何やってんだ?あのバカ達は。」
前を走る車を指差しながら硝子が言った。
するとそれが聞こえたかの様に前の車に乗っている五条と夏油が振り返って手を振っているのが見えた。
私は思わず手をふり返した。
「あんなの無視しとけばいいから。あいつらクズだし。」
「えっ?クズなの?二人とも?」
驚いて聞き返す。
「そう。だから必要以上に相手しない方が身の為よ。」
硝子はそう言うと窓を少し開けてタバコを吸い始めた。
懐かしい香りがする。
以前、とても良く嗅いでいた香り。
目を瞑ればほら、
手放した記憶が脳裏に甦る。
そう、手放したはずの想い出が。