第1章 始まる
「今日からウチの2年に入る転入生を紹介する。龍恋だ。」
「…龍恋。よろしく。」
私はぶっきらぼうに挨拶し、軽く会釈をしてクラスメイトの方を見た。
そこに居たのはお団子頭の男一人とホクロの女一人だ。
「よろしくね!私は家入硝子。」
「私は夏油傑だ。よろしくな。」
あれ?噂の男がいない。
「ど…どうも。」
ぎこちなく返事を返す。
「おい!傑、硝子。」
突然大きな声を出す夜蛾先生に少し驚く。
「何ですか?先生…ってあいつの事ですよね。あいつならもう来ますよ。」
そう言って夏油は教室の入り口に目をやった。
すると、戸がガラガラと開き、
「おっはよぉーう!」
明るい声を響かせながら一人の男が入ってきた。
声と同じく明るい色の髪に何故かサングラスを掛けており、身長はかなり高そうだ。
へぇ、ちょっとカッコいいかも。
心の中でそうつぶやく。
「こらっ、悟。こういう微妙な遅刻をするんじゃない。」
先生が怒っている。
だが、当の本人は悪気なさそうに舌をペロッと出している。
なるほど、これが噂の五条悟か。
「ごめんねぇー先生。あれっ?えっとー誰?」
彼が謝りながら席に着こうとした時、先生の横に立っている私に気付いた。
「今日からウチに転入してきた、龍恋さんだよ。」
すかさず夏油が教える。
「えっ!?転入生?あれっ?今日だっけ?…ま、いっか。よろしくね、恋。俺は五条悟。」
そう言いながら五条は腰を屈めて私の顔を見つめてニカッと笑った。
一瞬、ドキッとした。
「は…はい。よろしく。」
私はそう答えるのが精一杯だった。