第31章 涙する
「何飲む?コーヒー?お茶?酒?お前の好きな甘めのワインもあるよ。」
「じゃあ、ワイン。」
「かしこまりました。どうぞ、ソファにお座りください。」
言われた通り、ソファに座った。
悟がキッチンからワインやグラス、お皿を運んでくる。
最後にケーキの箱を持ってきた。
「色んなの買ってきたから好きなの食べろよ。」
「うん。」
箱を開けてビックリ。
「これ何人分?」
定番のいちごショートにモンブラン、チーズケーキ、チョコケーキ、タルト、パイ等色とりどりのケーキが箱にぎっしり詰まってる。
「12個あるよ。お前は少しずつ食べろよ。色んなの食いたいだろ?残りは僕が食うから。」
「うんっ!ありがと。でも、悟のお誕生日でしょ?」
「僕はいいの。」
「ふーん、じゃあ、最初はモンブランにしよっと。」
モンブランをお皿に取る。
悟はワインを開けてグラスに注いだ。
「悟、お誕生日おめでとう。」
「「かんぱーい!」」
「ありがとう。でも、言うの忘れてただろ。」
「えへ。」
食事の時も乾杯したのにおめでとうを言うのをすっかり忘れていた。
「はい、アーン!」
悟が突然モンブランをフォークに乗せ、私の口元へ運んできた。
「えっ?」
顔を顰める私。
「口開けて。」
言われた通りに口を開け、モンブランを食べた。
「おいひい。」
「良かった。」
「もうひと口行っとく?」
「うん。」
「はい、アーン。」
こんな調子でワインを飲みながらケーキを食べる。
「そうだ、コレ見て。」
バッグからスマホを出し、動画を悟に見せる。
「これって今日の?」
「うん。生徒が動画撮ってたの。」
「やべ、僕白目むいてるじゃん。」
「ムカつくから本気で絞めちゃった。」
「ムカつくって……僕の事嫌い?」
「うん。」
好きだなんて言ってやらない。
「即答するなよ、凹むから。」
「えへっ。」
少し酔ってきたな、私。
「しゃとるぅ、もう、お腹いっぱいになったよ。」
「じゃあ、残りは僕が食べちゃうね。」