第31章 涙する
いつも賑やかな悟が今日は静かだった。
私も黙ってた。
和くんの話だと悟は大ババ様に私と結婚したいと思ってたって言ったらしい。
確かに一緒に暮らす話や、子供の話はしてた。
私がはぐらかしてたんだけど。
私と結婚する為に古い慣習ぶち壊すって言ったんだって。
それが嫌なんだよな。
そんな事して欲しくない。
何で私なんだろう?
こんな地味で老け顔の女のどこが良かったんだろう?
何でこんな歳になっても可愛いって言うんだろう。
悟は簡単に好きって言う。
本当にそう思ってる?
あんなに浮気しといて。
他の女にも言ってそうな気がする。
信じられない。
あんなに浮気してたくせに。
何されても悟が好きだって思ってた。
それは変わらない。
本当?
今は悟の事が信じられない。
自分の気持ちも信じられない。
歩きながらうだうだ考えを巡らせていたら泣きたくなった。
だけど泣かない。
泣けない。
必死に堪える。
「どした?」
暗がりなのに何でバレたんだろう?
泣きそうになってる事。
「な…んでもない。」
「僕といると辛いの?」
「うん。」
素直に答えた。
「ごめんね、何もわかってやれなくて。言ってくれれば良かったのに。」
「言ったら暴れてたでしょ?」
「多分ね。昨日もおばあちゃん殺す気で乗り込んじゃった。」
「だから言えなかったの。言おうかどうしようか悩んだ事もあったけど。」
「ごめんね。」
「私が悩んでた時に悟は他の女といたんだね。さすがにキツイ。」
「ほとんど一回こっきりだよ。」
「そう言う問題じゃない。」
まったく、コイツは……
そうこうしてる間に悟の家に着いた。
「イライラしたから早くケーキ食べたい。」
「はいはい。わかりました、お嬢様。」