第31章 涙する
「ちょっと!これ誰か写真撮って。」
「恋先生!コイツ動画撮ってるよ!」
「じゃあ、後で私に送っといて。」
「あ、五条先生起きました。」
「恋ちゃんやり過ぎ。生まれて初めて女に落とされたよ。」
「さあ、みんなもやってみて。」
悟を無視して授業を進めた。
放課後、先に高専を出た。
家に帰り、シャワーを浴びて支度する。
悟が可愛いって言ってくれた黒いハイネックのニットワンピースを着て、去年のクリスマスに悟が買ってくれたダイヤのネックレスを着けた。
悟の誕生日だしね。
約束の5時半ピッタリに悟が迎えにきた。
運転手は伊地知だった。
「伊地知も大変だね。プライベーでもこき使われて。」
「いいんですよ。僕からのプレゼントですから。」
「そうなんだ。」
「伊地知、よろしく。」
「了解です。」
車が静かに発進した。
「それ僕が好きな服じゃん。」
店に着いて車を降りると言われた。
「うん。コレは悟がくれたやつ。」
胸元を指さす。
「本当だ、去年のクリスマスか。もっと高いのにすれば良かったのに。」
「コレが良かったの。」
「お前のそういうところ、好きだよ。」
聞こえないフリをした。
浮気しまくってたヤツの甘い言葉なんて信用できない。
「ケーキはウチにあるから。」
食事が終わると悟が言った。
「お腹いっぱいなのに食べられるかな?」
「じゃあ、途中で車降りて散歩して帰る?」
「いいね。少しはお腹減るかも。」
伊地知に頼んで途中で降ろしてもらう。
「伊地知、帰りはタクシーで帰るから大丈夫よ。」
「いいですか?五条さん。」
悟の顔色を伺う伊地知。
「いいよ。」
夜道を悟と歩く。
不意に手の甲に悟の指が軽く触れた。
手の平を外に向ける。
指の間に悟の長い指が割って入ってくる。
久しぶりに手を繋いで歩く。
恋人繋ぎで。