第31章 涙する
「うそ!?悟が?」
「お前とダメになった原因がババアだと思ったみたいだな。ほぼ当たりだろ?」
「うん、ほぼね。」
「その事だけどな、俺がババア説得してやったからお前は自由だ。」
「何言ってんの?」
「だから、お前は誰と付き合おうが誰を婿にとろうがどこへ嫁に行こうが自由なんだよ。」
「なんで?」
その後の和くんの話は衝撃的だった。
大ババ様が言った事を一生懸命守った私がバカみたい。
本当は好きだったけど言いつけ通りに覚悟を決めて悟と別れたのに。
人が死ぬって脅したくせに。
今度は御三家上等だって。
建人との事だって悟と別れなければ起こらなかったことなのに。
「そうだ、もう一つお前に教えておく事があるんだ。落ち着いて聞けよ。」
「何?」
「五条くんはお前が知ってる以外にも8人の女と浮気してたんだと。」
「そ……そんなに!?何となくおかしいとは思ってたけど。」
「鬼ババアがカマかけたら引っかかって吐いたんだ。」
「鬼ババアが悟の事を遊び人だと思ったことはあながち間違いじゃなかったんだね。」
悟が他にも浮気してるような気はしてたけど、勘違いであって欲しいと願っていた。
別れたとはいえ予想していたとはいえ、やはり眼前に突きつけられると悲しくなった。
「泣くなよ…‥って言っても無理か。ほら、よしよし。」
久しぶりに頭を撫でられる。
子供の頃から大好きだった人。
会いたかったけどまさかこんな再会になるとは予想していなかった。
「やっぱ……別れ…‥て正解、かな。」
「ゆっくり考えればいいよ。お前の思うように生きろ。」
そう言うと和くんは私を抱きしめた。
懐かしいタバコの香りがした。
「硝子、私1人になりたいから帰る。」
言いながら和くんから離れた。
「じゃあ、ウチに行ってて。」
硝子から鍵を渡される。
「和くん、大ババ様にそろそろ引退しろって言ってあげて。和くんが言えば従うはずだから。」
「わかった。俺たち家族、京都の家に住むことになったから。」
「そう。奥さまによろしく言っといて。」