第30章 ●慮る●
「五条、アンタ変なことしてなかったでしょうね?」
硝子が僕の顔を見た途端に言った。
「してねえよ。」
「家入さーん、これどこ置いたらいいですか?」
硝子の後ろからたくさんの荷物を抱えた伊地知が入って来た。
「お前、何だよその荷物。」
「今夜は恋の憂さ晴らしにみんなで酒盛りしようと思って買って来た。伊地知、キッチンに運んで。」
「一昨日も酒盛りしてたじゃん。」
「あれは失恋パーティー。今日のは憂さ晴らしの酒盛り。」
「何だよそれ。お前が酒飲む口実だろ?」
「うるさいよ、クズ五条。」
恋の声に驚く。
いつのまにか酎ハイ片手の恋がソファに座ってる。
「おい、お前もう酔ってんのか?」
「酔っちゃ悪いですか?」
「いいねえ、恋。さあ、五条、伊地知、私らも飲むよ!」
こうして4人での酒盛りが始まった。
恋が楽しそうに笑ってる。
よかった。
笑ってくれて。
「恋ちゃん、明日のデートの約束生きてる?」
完全に酔う前に聞いてみた。
「もちろん。ただ飯に、ただケーキ逃すわけないじゃん。」
「何でもいいよ。お前とデートできるなら。」
明日が楽しみだ。