第30章 ●慮る●
「酷くない?30までに五条以外の男と結婚して分家の後を継げって言ってたくせに今度はいきなり自由にしろよ。」
僕の頼みを無視して話し出す硝子。
「御三家上等だって言ってたよ。」
「それ、和くんから聞いた。あのババアは前に御三家の人間と結婚したら何人も死人が出るって恋の事脅したのよ?それなのに今度は五条が暴れて御三家の人間殺そうがどうしようが知ったこっちゃないって言ったんでしょ?」
「酷いよな。」
「これで本当に幸せになれると思ってんのかね。ババアも和くんも。あの子、ボロボロだよ。10年もババアに言われた事信じて生きて来たんだから。」
「これから僕が幸せにする。」
「クズの五条にできるかねえ?」
「がんばるよ。」
「あの子、アンタが暴れると困るから何も言わずに別れたのよ。アンタに五条家や他の御三家と揉めて欲しくなくて。」
「いい女だよ。」
「今回はかなり大変だと思う、アンタの所に戻すの。私は恋の味方。」
「わかってる。とりあえず居所教えて。」
「私の部屋にいるよ。多分今頃お菓子バカ食いしてるんじゃない。」
「わかった。じゃあ。」
「私ももうすぐ帰るから変な事するなよ。」
「しねえよ。」
硝子のマンションへ急いだ。
合鍵を使って入る。
「恋!」
名前を呼びながらリビングへ行く。
「恋!」
「何か用?」
ソファに座り、ぼーっとしてる恋。
テーブルの上にはお菓子がたくさん。
チョコにクッキー、カステラ、饅頭。
和洋折衷だな。
だけどどれにも手をつけてない。
「それ、食べていい?」
「どうぞ。」
恋の隣に座り、饅頭を取って食べた。
「美味いね。恋、大丈夫?」
「大丈夫そうに見える?」
「見えない。」
「だったら察しろバカ男。」
僕を睨む恋。
よく見ると目が真っ赤だ。
泣いてたんだな。
「バカな男が好きなんだろ?」
「うるさい!クズ男!」
相当キレてるな。