第30章 ●慮る●
「あっ!和くん?いつ戻ったの?」
「昨日戻ってきたんだ。一緒に逃げてた女がなかなか離婚できなくてね。やっと離婚が成立してそれから海外行って暮らしてたんだけど子供が出来たんだよ。龍家の跡継ぎになれる子供がね。だから帰ってきたんだ。」
「要は、金が尽きたんじゃよ。」
おばあちゃんがため息まじりに言った。
「10年も恋の事ほっといて何やってたんだよ。」
「恋の事は時々情報入手してたよ。建人と別れて君と付き合ってるって知った時は驚いた。だけど何年も続いてるようだから安心してたんだよ。それなのに別れたんだってね。大婆様のせいでもあるけど、それ以前に君が恋を傷つけたんだろ?」
何も言い返せなかった。
「和や、このガキは恋と一緒になりたいんじゃと。婿に入ってもええとぬかしおった。」
「へえ、本気なんだ。」
「本気だよ。」
「ウチとしては婿でも嫁でもどっちでもいいんだよ。僕の子供がいるから。だから、恋の好きなようにさせようと思ってるんだ。ねえ?大婆様。」
「ああ、そうじゃ。恋のしたいようにさせる。わしはそこまで龍家を残したいと思っとらんのじゃよ。和、お前もそれは頭に入れておけ。」
このババア、恋に婿取って家つげとか言ったくせに。
「だけど、それもこれも恋次第。恋がどうしても君と結婚したいって望んだらの話だよ。」
和くんが真剣な顔で言った。
「お前の不貞は今から恋に知らせる。和、行ってこい。」
「御意。」
「ちょ、ちょっと待ってよ!」
和くんを追いかけようとしたら、ババアが蛇を出した。
「お前はまだここにおれ。」
「おばあちゃん、怖いよ。」