第30章 ●慮る●
思えば今まで将来の話は全てはぐらかされてきた。
結婚の話や子供の話もすぐに別の話題に変えられた。
一緒に住むのも断られたし、僕の実家に行く事も拒まれた。
「思い当たる事があるじゃろ。」
「恋にそうさせたのはおばあちゃんでしょ?いつ言ったの?」
「お前らが付き合い出す前じゃ。」
「じゃあ、恋は初めから遊びだったの?僕の事。」
「遊びじゃったと思うか?」
「思わない。何で遊びにしとけなんて言ったの?」
「お前が遊びじゃからの。恋が本気になったら可哀想じゃろ。じゃから30までに婿を取れと言ったんじゃ。五条のガキとの付き合いはそれまでにやめろと言った。」
「僕は遊びじゃないよ!」
「他所に女作っとった奴が言うセリフか?」
「アレはその、なんていうか……とにかく、恋の事は本気なんだよ。結婚したいって思ってるぐらい。」
すると、おばあちゃんは大笑いした。
「はっはっはっは、何じゃお前。本気で恋と一緒になれると思っておるのか?」
「龍家がこれまでされてきた事を思えば恋を僕と結婚させたくない気持ちはわかるんだ。だけど僕がその古い考えをぶち壊すから。龍家に婿に入ったって良いよ。」
「バカなガキじゃ。婿入りなどと簡単にぬかしおって。ぶち壊すいうのは恋が望んだ事か?」
「まさか恋はそんな事………」
そうだ、恋は何も望んでない。
「わしは望まれて嫁ぐ方が幸せじゃと教えてやったまでじゃ。」
「僕は望んでるけどね。」
その時、襖が開いて誰かが入って来た。
「やあ!君が最強の五条悟くんだね?」
背が高くて筋肉質、歳は30代後半ぐらいか。
何者だ?
「アンタ誰?」
「俺は恋のはとこだよ。」
「わしのひ孫の和之進じゃ。」