第29章 破れる
「もっしもーし、愛しの悟くんでーす。」
「おはぎ出来たよ。今どこ?」
「ここだよ。」
「ここってどこ?」
その時、インターホンが鳴った。
「早く開けて。」
「何でいるのよ。」
玄関のドアを開けると、そこに悟が立っていた。
「そろそろできる頃かと思ってさ。持って行く手間が省けたんじゃない?」
「それはそうだけど。」
悟を部屋にあげるかどうか悩んだ。
「お前、七海と何があった?」
腰を屈め、私に視線を合わせる。
「どうして何かあったと思うの?」
「昨夜、伊地知に引っ付いて寝るぐらいに酔ってただろ?そんなに飲むなんて絶対何かあったと思うよ。それに七海の話したら泣きそうになってるし。バレバレなんだよね。とりあえず中入れてよ。寒い。」
悟を招き入れた。
「ううっ、寒かったあ。」
ヒーターの前に手をかざしてる悟。
「いつから待ってたの?」
「1時間くらい前からかな。鍵持ってると勘違いしてたんだよ。着いてから気づいた。」
お互いの家の合鍵は別れた時に交換した。
さっさとインターホン押せばいいのに。
「どれ?あ、本当だ冷たい。もう、何やってんのよ。」
悟の手を自分の手で挟んで温める。
「恋ちゃんの手あったかい。体ごとあっためてよ。」
手を離し、私を抱きしめた。
「悟……冷たい。」
「冷えちゃったんだよ。恋ちゃんはあったかいね。」
「あったかい飲み物いれてあげるから離して。」
「飲み物はいいから恋ちゃんの可愛い唇ちょうだい。」
「ヤダ。」
悟の腕を振り解き、キッチンへ行った。
「何がいい?私は紅茶にする。」
「じゃあ、僕も。お砂糖たくさん。」
「わかってる。」
キッチンにある2人用の食卓に向かい合って座り、紅茶を飲みながらおはぎを食べた。
「それで?七海にいじわるされちゃったの?」
優しく聴いてくれた。
そんなに優しくされたら泣いちゃいそうだよ。
「昨日、高専で見たの。硝子と一緒に廊下歩いてたら。」
「何を?」
「えっと、高山が建人に抱きついて建人の腕が高山を抱きしめて高山が建人にキスして建人が受け入れてたところ。」
目が潤んで視界がぼやける。