第29章 破れる
「うるさい伊地知。ところで何で五条がここにいるの?」
「お前が合鍵渡してきたんだろ?ここで飲んで僕が帰る時に鍵閉めて行けって。」
「あー、そんな事もあったような……ところで今何時?」
「朝の5時。」
「早っ、何してんの?こんな時間に。」
「徹夜で任務だったんだよ。さっきやっと帰ってきたの。」
「おちゅかれでーす。」
半分寝ながら言った。
「もおっ、可愛いんだから。」
「ねみゅい。」
眠すぎて自分が何を言っているのかすらわからない。
「よしよし、おいで。僕の膝枕でお眠り。」
「ありがと……ん……だ……い……しゅき……」
そして、私は眠りについた。
「ンッ、アァ、あー、よく寝たぁ。」
「おはよ。寝起きの声エロいね。寝てる間も僕の股間に息吹きかけるから、元気になりっぱなしだよ。」
目が覚めると悟の顔が見えた。
「何言ってるの?朝っぱらから何なの?変態なの?」
「ひどいなあ。でも、キツイ恋ちゃんも可愛いよ。」
悟の顔が近付いてくる。
ペチッ
手で悟の額を叩いた。
すぐに起き上がり、悟を睨む。
「何やってんの?変態。」
「もうっ、せっかくおはようのチューしようと思ったのに。」
すねる悟。
隣を見ると、硝子はまだ眠っていた。
「あれ?伊地知は?」
「アイツなら帰らせたよ。」
「殴ったの?」
「まあね。」
「可哀想に。ところで今何時?」
「8時だよ。」
「もうそんな時間なんだ。顔洗ってくる。」
「はい。」
立とうとしたら、手を差し伸べられた。
迷わずその手を掴む。
「ありがと。」
引っ張って立たせてくれた。
悟は、私にだけ優しいんだ。
昨日はここでシャワーを浴びて部屋着に着替えてからお酒を飲んだ。
歯を磨いて顔を洗い、用意してきた服に着替えた。
今日はゆるニットとジーンズ。
「悟、朝ごはん食べる?」
「うん。食べる。」
「じゃあ、膝枕のお礼にだし巻き卵作ってあげる。」
「やったー!」
ニットの袖が濡れると嫌だから袖付きのワンピースみたいなエプロンを着る。
背の低い私が着れば足首まである。
冬の私の定番エプロン。