第29章 破れる
3人で高専に戻り、保健室へ行くと建人がいた。
「建人くん!」
高山が建人に駆け寄る。
「涼子ちゃん!」
建人が高山の名を呼んだ。
私の名ではなく、彼女の名を。
その様子を見て確信する。
この2人、お互いに思い合ってるんだって。
「涼子ちゃんねぇ。」
意地悪そうな顔で建人を睨む硝子。
「恋、すみません。」
「建人、いい子だね。綺麗だし、私より建人の事想ってくれてるし……完敗だよ。」
「恋……」
私の言葉の意味を瞬時に感じ取る建人。
「建人、ごめんね。」
「何であなたが謝るんです。」
「ちょっかいばっかりだしてくる悟の事、私本気で拒めなくて……ごめん。私、まだ好きなの。」
「いいんです。私が悪いんですから。あなたが五条さんの事を好きな事は初めからわかっていたのに。それと、涼子ちゃんの事黙っててすみませんでした。自分1人の力でやりたいから私の後ろ盾がある事を誰にも知られたくないと彼女に言われて。」
「それでも自分の彼女には言うでしょ?普通。建人は優しすぎるんだよ、誰にでも。」
「すみません。」
「これからは涼子ちゃんだけに優しくしてあげて。」
「はい。」
建人の隣にいる高山がハッとした。
「あなたはどうするんですか?」
「私は大丈夫。硝子がいるから。」
「アハハッ、私は恋を愛してるよ。」
硝子が笑いながら言った。
「ありがと。私も愛してるよ、硝子。」
「家入さん、恋の事頼みます。」
「了解!あっ、そうだ。まだ五条にはこの事黙っといた方がいいよ。」
「なぜです?」
「アイツの事だから大騒ぎするに決まってるでしょ。僕の大切な恋ちゃんを傷つけた奴は許さないっ!てね。あんたも高山も殺されかねない。」
「そうだね。悟にはそのうち私から言うよ。」
「わかりました。」
建人と別れた。
あっさり別れた。
だって彼には可愛い人がいるから。
これ以上、優しい彼を私のところに引き留めておく訳にはいかない。
夜、硝子の家で失恋パーティー。
「大丈夫?恋。」