第29章 破れる
建人とお似合いだなあ。
なんて呑気に思ってた。
「えっ……うそ。」
その時高山が建人の方に歩み寄り、抱きついたのだった。
「おいおい。見せつけてくれるじゃん。」
硝子が言った。
それもそのはず、いきなり抱きついてきた高山の腰に手を回している建人。
その後、更に予期せぬ事が起こった。
高山が建人にキスをしたのだった。
「え?」
背が高いから頑張って背伸びをする必要もない。
ちょっと顔を上げればいいだけ。
私なんて、思いっきり背伸びしたら建人がちょっと屈んでくれてやっと届くのに。
なかなか唇を離さない高山。
高山の腰に手を回したままの建人。
「七海のヤツ……何やってんだろ。」
硝子が怒りを滲ませた。
「ちょっと!」
小声で呼び硝子の手を引いて窓から離れ、壁際に隠れた。
「何でコッチが隠れるの?」
硝子も小声になる。
「だって……何となく。」
下を向く私。
「どうするの?」
「わかんない。」
「恋、とりあえずコーヒー飲みに行こう。」
急いでその場から離れ、裏口から外へ出た。
玄関から出ると建人たちに鉢合わせしそうだったから。
「高山が私を睨んでた訳がわかった。」
カフェでコーヒーを飲みながら気持ちを落ち着けた。
「あの高山って子、どういう子なの?」
「えっと、3ヶ月くらい前だったかな?中途採用で入って来たんだけど、綺麗な子だよね。背高いし細いし、美人系。」
「だけど、あんま目立つ感じじゃないよね。」
「うん。大人しいからね。だけど、仕事は出来るよ、気が利くしね。」
「七海とは?2人で任務とかあった?」
「さあ?どうだろう。補助監督が誰だったかなんていちいち聞かないし。」
「ちょっとあれ、噂をすれば。」
硝子が窓の向こうを指さした。
「高山……」
高山がこちらへ向かって歩いてくるのが見えた。