第27章 決する(五条の場合)
「ねえねえ恋ちゃん、お弁当作ってくんないの?」
今日は久々に2人で討伐任務。
討伐が終わり、高専に戻る車の中で聞いてみた。
「だって悟、意地悪するから。」
「えー、あれは意地悪じゃなくてスキンシップなんだけどな。」
「あんな事するからもう作ってやんない。」
そう言ってぷいと窓の方へ顔を背ける恋。
「そんな事言わないでよ。ねえ、作って。お願い、恋ちゃあん。」
恋の手を握り、すがる僕。
「もおっ、しつこい。」
手を跳ね除ける恋。
「だってぇ。」
「やめて、第三者がいるとこで。」
今日の補助監督はこの前の高山だ。
「はーい、恋ちゃん。」
その時、運転している高山がルームミラーで僕たちを見ている事に気がついた。
高専に戻り、報告を済ませてから廊下の隅でさっきの話を再開する。
「ねっ、恋ちゃん、お弁当作ってよ。」
「もう、わかったよ。作りゃいいんでしょ。」
遂に根負けした恋。
「やった!ありがとう、恋ちゃん大好き。」
言っちゃった。
「何言ってんの?」
「だから、俺はずっとお前が好きなの。」
「ハア?」
「こんなに好きにさせたくせに。」
このセリフ、昔恋から聞いたな。
「悟のバカ!」
「はいはい。バカな男が好きなくせに。」
「もおっ。」
怒りを滲ませる恋の後ろの壁に自分の両手をドンッとついた。
小さな恋を閉じ込める。
「強がるなよ。」
見下ろす僕。
見上げる恋。
「強がってなんか……」
おでこにチュッとキスした。
でも、また目に一杯涙を溜めてるからすぐに解放してあげた。