第27章 決する(五条の場合)
「悟、ちゃんと食べてる?」
別れてからひと月ほど経ったある日の昼休み、恋に聞かれた。
「うーん。甘いものはちゃんと食ってるよ。」
「硝子たちとしょっちゅう飲んでるんでしょ?体壊しちゃうよ。」
心配そうに僕の顔を見る恋。
「甘いものは脳が求めるから食べるけど、それ以外はあんま食べる気がしなくてさ。」
お前の手料理以外、食う気しないんだよ。
「じゃあ、お昼一緒に食べよ。お弁当作って来たから。」
「わーい!ありがとう。ママ。」
そう言うと、恋の顔色が変わる。
「その呼び方はやめろって言ったでしょ。」
「だってぇ。じゃあ、恋ちゃんならいい?」
「……まあ、いいよ。」
「わかった。ありがとう、恋ちゃん。」
甘えモード全開の僕。
裏庭のベンチに並んで座り、弁当を食べる。
「うん、美味い!」
「本当?よかった。悟の好きなものいれたんだ。」
卵焼き、ウインナー、ミートボール、かぼちゃの煮物。
そしてわかめごはんのおにぎり。
どれも僕の好物。
そして、デザートには手作りのアップルパイ。
「もしかしてまたバカみたいにお菓子作ってんの?」
コイツは何かあるとお菓子作りまくる癖がある。
「最近落ち着いた。このパイは昨夜2週間ぶりに作ったの。」
「やっぱり作りまくってたんだ。でも、僕の口には入らなかったね。」
「ほとんど、私と建人で食べちゃったから。えへっ。」
可愛い。
今のでお菓子くれなかった事は帳消しだ。
「美味かったあ。ごちそうさまでした。ありがとう恋。」
「良かった。食べてくれて。少し痩せたみたいだったから。」
そう言って微笑む恋。
「僕の事心配してくれてたの?」
「うん。親友だからね。」
「そう……だよな。親友だもんな。」
親友になってくれなんて頼んだ自分が忌々しい。
その日の晩は、なかなか眠りにつけなかった。
それからもちょくちょく弁当を作ってくれた。