第26章 ●決する●
「建人……」
「五条さんから聞きました。別れたこと。大丈夫ですか?」
「うん。クッキー食べたから大丈夫。」
「そんな事で気が晴れるんですか?」
「建人がいてくれるから。」
「恋……」
私の肩に顔を乗せてくる。
「なあに?」
頭を撫でてあげた。
「好きです……」
「知ってる。」
「さっき五条さんと別れたばかりで申し訳ないのですが、私と付き合ってくれませんか?」
「建人……」
「焦ってすみません。ですが、もう待てなくて。」
「私なんかでいいの?別れる為に建人を利用するような女だよ。」
「あなたは長い間あの五条さんとの関係を続けてきたじゃないですか?立派な事です。そんなあなたが好きです。」
「言ったかもしれないけど、私が自由に出来るのって後少しなの。それでもいいの?」
そう言ってから建人の腕を解き、水道を止めた。
そして後ろへ向き直り、彼の顔を見上げる。
「その事ですか。それでしたら私は婿に入る事に何の抵抗もありません。」
「はい?」
「七海家の方も私が婿に入る事になんの問題もありません。」
「自分が何言ってるかわかってんの?」
「はい。結婚を前提にお付き合いしていただければと……」
そう言って俯く建人。
衝撃!
まさに衝撃!
「…………」
驚きのあまり声が出ない。
「恋?」
「ご、ごめん、あまりにもびっくりして……だって、結婚は訳わかんないうちにろくに知らない男と無理矢理させられて、訳のわかんない間に妊娠して子供産んで子育てして、そ、それで、何か訳わかんないうちに年取ってばばあになって……ンン。」
唇を塞がれた。
「私ではダメですか?」
唇を離すと、真顔で聞かれる。
「何が?」
頭が回らない。
「結婚相手として。」
「ダメなんかじゃない……だけど、ほんとに私でいいの?」
「あなたがいいんです。」