第26章 ●決する●
「五条のガキと添い遂げられるとは思うな。」
「何で?五条悟だから?」
「それもあるが、何故わしらがこんな山奥にいるかわかるか?」
「さあ?」
「それはな………」
私が本家で禁欲&修行をしていた頃、大ババ様から聞かされた。
龍家の歴史。
何故こんな山奥でひっそりと暮らしているのか。
「御三家がウチを蔑んどるからだけじゃないぞ。龍家も御三家を蔑んどるんじゃ。その事、努努忘れるでないぞ。」
「それ何時代の話?今は平成だよ?ウチも和くんたちも京都市内に住んでたし。」
「このたわけが!呪術界が人手不足なのは知っておろ?頼まれたんじゃ。昔の因縁は忘れて若い術師を外に出して高専にも通わせろと言われたんじゃ。」
「だったらいいじゃん。」
「そんなもんは上っ面だけじゃ。人手不足解消の為の上手い言いわけじゃ。何が因縁を忘れろじゃ。お前らが一緒になれば何人の人間が死ぬ事になるか……」
「そんな事になるの?」
「大昔にも似たようなことがあった。御三家の男と龍家の女。男が力があったんで無理を通したんじゃ。その挙句、お互いの家のもんが何幾人か死んだ事でその両人が思い直し結局別れたんじゃ。」
「何で死ぬの?」
「そいつらが逃げるのを手伝った者が当主により処刑され、男の許嫁は悲観して自害、女の父親は発狂して使用人殺める。それだけじゃないぞ。他家に嫁いどった姉妹は離縁されるわ、兄弟の嫁は実家に帰るわ大騒動じゃ。」
「そんな……」
「そういう訳なんじゃ。それからお前は分家の跡取りじゃろうが。婿を取らないかん。」
ウチは亡くなった祖父、大ババ様の次男の代からの分家。
母は一人っ子だったから婿を取った。
私も一人っ子だから婿を取らなきゃいけない。
「婿……ねぇ。」
まだ学生だったその頃の私は、結婚なんてまだまだ遠い先の話だと思った。
「あのガキは五条家の跡取りじゃろ。いずれにせよ、跡取り息子はダメじゃ。」