第26章 ●決する●
すると、何故かまた抱きしめられた。
「恋、僕の親友になってよ。」
意外な言葉だった。
「親友?」
「1人、いなくなっちゃったしね。親友なんだから僕には何でも話せよ。どんな事でも相談乗るから。」
「ありがと。」
また涙が溢れる。
「七海のエッチに飽きたら言ってね。恋ちゃんの事いっぱい気持ちよくさせてあげるから。」
「バカ。」
「これからもよろしくな。良き、親友として。」
「うん………」
こうして、私が愛していた男は親友になった。
初めて会った日のことを思い出す。
あれは、私が東京へ来た日。
ニカッと笑ったあなたを好きになった。
初恋の人に似たあなたを。
あなたのために強くなろうと思った。
禁欲までした。
他に女がいたってあなたへの想いは変わらなかった。
闇へ引きずり込まれそうになった時もあなたの事を信じた。
色んな苦労があったけど、乗り越えた。
これからもあなたの夢のため、術師を続ける。
あなたの夢のため、教師を続ける。
あなたの力になりたい。
あなたは親友。
そしてその親友の腕の中、私は慟哭する。
親友の体も震えていた。
声を殺して泣いていた。
背中をさすってあげる。
良き、親友として。
大好きな親友、五条悟。
「おーい、終わった?」
悟と抱き合って泣いていると、奥の部屋から硝子が出て来た。
「硝子!」
ビックリして悟から離れる。
「硝子、お前なぁ。見りゃわかるだろ?どういう状況か。察しろよな。」
悟が文句を言った。
「コーヒー入れようかなあと思ってね。飲むでしょ?お二人さんも。」
「飲む。」
「僕も。」
「貰い物のクッキーあるけど食べる?」
「食べる!」
「僕も!」
私も悟も甘いもの好きだから。