第26章 ●決する●
この温もりが好きだった。
触れられるたび、愛していると思った。
終わりが来る事を知っていたから、貪欲に求めてきた。
求めて、ただひたすらに愛した。
そして今、終焉を迎えた。
こうするしかない。
自分に言い聞かせる。
悟に言えば無理を通すから。
私たちが一緒になる事で呪術界の均衡がくずれるかもしれない。
誰かを踏み台にして得た物なんて幸せとは言えない。
「あなたを……愛してた。」
愛、してた……
いい。
いいんだ。
過去形で。
過去のものにしていこう。
こうしてどんどん過去形にしていこう。
この人への想いを手放せるまで。
「僕もずっと愛してたよ。」
「……っ、ごめんね、悟。今までありがとう。私は、あなたの側にいられてとても幸せでした。」
言えた。
「恋……どうしても別れたいの?」
泣きじゃくる私の頭を撫でてくれる。
「もう……無理なの。」
胸が張り裂けそう。
「前に七海の胸に飛び込むって言ってたよな。」
「……うん。」
「アイツにも、今度やったら奪うって言われてたのに、僕はバカだね。」
「……っ、ごめんね。悟のそばにいるのが……疲れちゃった。ほん、っとに……ごめん。」
キツく抱きしめられる。
この人が好きで、この人のために生きてきた。
この人の夢を自分の夢にして。
「ごめんな。こんな事になるなんて。全部僕のせいだ。恋は悪くないからね。」
「ありがとう。私を好きになってくれて。」
「こちらこそ。僕なんかとこんなに長く一緒にいてくれてありがとう。」
そんな事言われたら、泣いちゃうじゃん。
「でもさあ、エッチは大丈夫?僕との相性最高だったでしょ?忘れられるの?」
「ハァ?な、何言ってんの?そんなの頑張って忘れるに決まってんでしょ。」
呆れて体を離した。
まったく、コイツは。
おかげで涙が止まっちゃった。