第26章 ●決する●
「あーっ、どうしよう。」
「何をどうするの?」
「悟になんて言おう。」
「正直に言えば?昨夜は七海にすっごくイイ事されましたって。」
「な、何で!?」
何故硝子が昨夜建人とした事を知っているのか不思議だった。
「私が七海をけしかけた。」
「はい?何言ってんの?」
「だから、私が七海に五条から奪えって言ったの。」
「何で?」
「五条が女作ってたから。」
「……そう、だよね。」
「冗談はさておき、本心を伝えればいいんじゃない?自分は御三家の人間とは一緒になれないから別れるって。」
硝子は全てを知っている。
「それを言えば何するかわかんないよ。」
「だろうね。だったら、普通に浮気が許せないでいいんじゃないの?それだって本当の事でしょ。」
「そうだね。そうだよね。」
「そうだ。どう考えたって向こうが悪い。」
硝子がそう言って机を叩いた。
「わかった。頑張って伝える。」
「それで?五条と別れてどうすんの?七海と付き合う?」
「それは……わかんない。でも、建人は好き。」
「マジ?アイツ今ごろ相当喜んでるだろうな。」
そして夕方、悟と話す時間がやって来た。
保健室で待ってると悟がやってきた。
「じゃ、私は仕事があるから。」
そう言って奥の部屋へ引っ込んだ硝子。
「話って何?」
悟がぶっきらぼうに言った。
「悟、ごめんね。」
「何が?七海との事?」
「許してあげられなくてごめん。」
「僕は許すよ。七海と何をやってたとしても。」
「ごめん。」
「僕の事嫌いになった?」
好きに決まってる。
何をされても好き。
やっぱり私はこの男が好きなんだ。
だけど、この想いは手放すと決めたから。
「もう…っ、悟とは……付き合えない……ごめんね。」
とめどなく溢れる涙。
堰を切ったように溢れ出す。
下を向き、手で顔を隠して嗚咽を漏らす。
「謝んなよ。」
不意に包まれる温もり。
「さ、とる。」
「ごめんな。もう、泣かないで。」
優しく抱きしめてくれた。