第26章 ●決する●
私がだし巻き卵をつくっている間に建人が食パンを焼いて、コーヒーを入れ直してくれる。
「その格好で料理してると卑猥だ。胸、見えてます。」
「わざと。えへっ。」
「可愛い。」
後ろから頭にキスされた。
「ねえ、建人。私、可愛いっていう年じゃないんだけど気づいてた?」
「いいんです。あなたはいつまでも可愛いです。」
「ありがと。」
「可愛い。」
後ろから抱きしめられる。
「火使ってるから待って。」
「いくらでも待ちます。」
卵焼きが出来、火を止めお皿に取った。
後ろを振り返り、精一杯背伸びしてキスした。
建人は私の腰に手を回し、つかまえる。
「その格好でいられると困ります。」
困ってる顔がたまらなく良い。
「わざと。」
「可愛い人だ。」
朝ご飯の前に再び食べられた。
そして2人して冷めた朝ごはんを食べた。
笑いながら。
その後、建人に自宅まで送ってもらった。
「朝帰り?」
マンションの前まで来たら、悟がいた。
少し、不貞腐れたような顔。
目が腫れぼったい。
飲み過ぎかな。
「悟、授業は?」
今日、悟は朝から授業のはずだった。
「自習にした。」
「二日酔い大丈夫?」
いつも彼の健康は気にかけてきた。
「恋ちゃんは?大丈夫?」
ちゃん付けにする時は甘えたい時。
もう、私に甘えないで。
「大丈夫。悟、話があるの。夕方の五時に保健室で。」
事務的に淡々と伝えた。
「わかった。」
短く答え、高専の方へ歩いていく悟。
後ろ姿でわかる。
悲しんでいる事が。
「大丈夫ですか?」
黙ってやり取りを見ていた建人が口を開いた。
「大丈夫。ありがとう。終わったら連絡するね。」
「わかりました。では。」
着替えて出勤し、悟に会った。
「おはよう、恋先生。」
「おはよう、五条先生。」
仕事上はきちんと接する。
昼休み、硝子に泣きつく。