第25章 苛まれる
「私の事ずっと恋ちゃんって呼んでたから。」
夢の中で呼んだと思っていたのは、現実だったのか………
「ごめん。」
「もしかして悟くんの奥さん?」
「違うよ、結婚はしてない。だけどもう10年も一緒にいるから。」
「恋ちゃん、どっか行っちゃいそうなの?」
「な、んでそう思うの?」
「だって行かないでって叫んでたし、謝ってたから。」
「ごめん。」
「謝らないで。もしかしてマミの事バレちゃった?」
「まあ、そんなとこ。」
「うわぁ、恋ちゃんがお気の毒。申し訳ない事しちゃったな。もっと早く悟くん返しとくんだった。」
「何で?」
「人の物に興味ないから。」
急に真顔になるマミちゃん。
「えっ?」
僕が驚いていると、マミちゃんは笑い始めた。
「アハハハッ、ごめんね。それは嘘。実はね、元カレが顔がいいだけのバカなの。」
「元カレ?」
「うん。そいつ、私の友達と浮気してたの。バレたら土下座して謝ってきたけど、腹立つから別れてやった。相手は友達よ?バレるに決まってんじゃん。だから、恋ちゃんの気持ちよくわかるんだ。辛いだろうね。かわいそうに。」
「僕も土下座したけど許してくれないんだ。」
「悟くんってさぁ、元カレにそっくりなんだ。」
「僕も顔がいいだけのバカなの?」
「アハハ、まあ、そんなとこ。浮気したって土下座して可愛く謝れば許してもらえるとか思ってんでしょ?」
「えっ?…….」
そうだ、僕は甘く見ていたんだ。
恋ちゃんは許してくれるって思ってた。
「もしかして恋ちゃん、よその男にでも取られちゃった?」
「何でわかるの?」
「私もそうだから。浮気がわかった時、男友達のとこに行った。」
「それでどうなったの?」
「その友達と寝た。だけどそいつとは友達だから一回きりでやめたよ。でも、それが彼氏にバレて逆ギレしちゃって大変だったのよ。だから、別れたの。」