第23章 陰る
「何故です?」
「龍家の蛇を宿す者の始まりは平安時代、都に暮らしてた貴族の娘から。その娘は生まれつき体に蛇がいて、とても強い呪術師になった。だけどその強さが仇となり御三家からは忌み嫌われ、呪術界では迫害された。娘は自分の代でこの苦しみを終わらせようと子供を産まずに死んだ。でもその後、その娘の兄の妻が蛇を宿す子を産み、一族は娘の二の舞になる事を恐れて隠し通すことを決心した。一族全員で山奥へ隠遁し、蛇を宿す者には子供を持つ事を禁じた。それからも蛇の子が生まれる度、同じようにした。何世代にも渡ってね。だけど、ある時その慣習を破る者が現れた。それが今の龍家の起こり。」
「初めて聞きました。でも、あなた達は京都市内に住んでいたのでは?」
「私も詳しく知ったのは最近の事よ。御三家に忌み嫌われた過去は連綿と現代にも受け継がれているの。そのために都から遠く離れた山奥で密かに暮らし、地域に出る呪霊のみを祓ってるって訳。京都に出てきたのは母達の世代になってから。世間を知るためと、私達若い世代を呪術高専に通わせるって目的もあったらしいよ。ま、結局ウチの母親は世間を知った結果ああなったんだけどね。」
「なるほど。迫害された過去があるから御三家の者とは結婚させられないというわけですか……でも、あなたの幸せはどうなるんです?」
「遅くとも30までには御三家以外の術師と結婚しろって言われてるから、それまでに悟と別れるつもりだったの。だけど、そんなの簡単に割り切れなくて悩んでた。でも、今回の事は良いきっかけなのかもしれない。」
私は悟という沼にハマっていた。
まわりの泥がゆるくて抜け出せなかった。
だけど今、少し足が抜けそうな気がしてる。
この機を逃せば二度と抜け出せなくなるかもしれない。
抜け出せないまま他の男と結婚なんて考えられない。
その時、テーブルの上に置いてる建人のスマホが震えた。