第23章 陰る
「…………………」
何も言いたくなかった。
口を開けば嗚咽が漏れるから。
「恋ちゃん?」
心配そうな顔をして私を見上げる悟。
「恋?」
硝子が心配そうにしてる。
深呼吸し、意を決して口を開く。
「マミちゃんが好きなの?」
「違う、すきなのは恋ちゃんだけだよ。マミちゃんはキャバクラの女の子だから、遊びだよ遊び。向こうも僕のこと客としてしか見てないよ。割り切った関係だから大丈夫、安心して恋ちゃん。」
コイツは一体何を言っているのだろう?
「……………」
だめだ、涙が………
「マミちゃんと比べるとやっぱり恋ちゃんは最高だって思えたよ。より一層恋ちゃん愛が深まったよ。」
バカ男、語るに落ちる。
他の女とヤッて確かめないと愛せないって事?
もう、無理だ。
ここから逃げ出したい。
「もし……ウウッ、マミ、ちゃんがっ、ンッ……良かったら私.……わた、ひっ……捨てられた……」
やっぱり、口を開くと同時に嗚咽が漏れた。
涙がとめどなく溢れる。
とにかくこの場を上手く治めてコイツから逃げようと思った。
「恋ちゃん?何言ってるの?」
不思議そうな悟。
「恋、後は私が。」
硝子が悟の前に立った。
「えっ?何だよ?」
戸惑う悟を尻目に廊下へ出た。
走って走って校舎の裏の林の中へ入る。
そこでスマホが鳴った。
建人からの着信だった。
「恋、今どこですか?」
「健人、どう、して?」
「昼間、硝子さんからメッセージが届いていたんですが、任務中だったものでさっき見たんです。今、高専に向かっててもうすぐ着きますが大丈夫ですか?」
「建人、助けて。」
「今、どこです?」
「裏の林。」
「五条さんは?」
「腹立つから逃げて来た。今は硝子が足止めしてくれてる。」
「わかりました。ウチに連れて行きますから、石段のところで待っていて下さい!」
「わかった。」
電話を切り、石段のところへ向かった。
西日が眩しかった。