第23章 陰る
そうだった。
すっかり忘れていた。
「だけど、そんな簡単に行けないよ。今までだって都合のいい時だけ頼ってるし。」
「何言ってんの、アイツは未だにアンタに未練タラタラよ。」
「うそ?」
「本当よ。この前、直接聞いたから間違いないって。」
「何かの冗談?」
硝子の言っていることが信じられなかった。
「本気よ。学生の時にアンタにフラれて一時は忘れようとして何人かと付き合ったりしたんだって。だけど、結局アンタがチラついて上手くいかなくて。それ以来、深い付き合いはしないようにしてるらしいよ。ここ一年くらいは割り切った関係の相手がいたらしいけど、それも最近向こうが結婚して終わったんだって。アイツはアンタに頼られることだけが唯一、生きる道なの。」
驚いた。
心底驚いた。
まさか、建人がそんなにも私を思っていてくれたなんて。
そして放課後、悟が保健室を訪れた。
「アレ?恋もいたの?どした?」
いつものように軽い感じでやって来た悟。
「五条、全部バレてる。」
咥えタバコの硝子が言った。
換気扇の下で吸ってる。
「何が?」
とぼける悟。
「これ、見つけた。」
そう言ってカードを見せた。
「何?これ。」
あくまでもとぼけるつもりのようだ。
「マミちゃんと何したの?」
マミちゃんと言った途端、悟の顔色が変わった。
「伊地知か……金やったのに。」
「伊地知に口止め料払ってたの?アイツ、そんな事ひと言も………後でシメる。」
硝子はそう言うと、タバコを灰皿に押し付けた。
「ごめん!恋ちゃん、許して。」
始まった……土下座ショー。
冷めた目で見下ろす。