第22章 苦悩する
「恋、あんなヤツ捨てたら?勿体無いよ、あんなヤツに恋は勿体無い。」
「恵は優しいね。」
微笑む恋。
「そんな、俺なんて別に。」
「優しくてイケメンで、恵はいい男だよ。」
「俺はイケメンでもいい男でもないよ。」
「イケメンだよ。昔の悟を思い出すもん。性格は全然違うけどね。アイツは見た目はいいのに性格が悪すぎて全然モテてなかったし。恵は性格悪くないでしょ?」
「性格わからないけどモテてはないよ。」
「去年のバレンタインにチョコくれた女の子いたじゃない。」
「そう言えば、そんな事もあったっけ。」
俺は学内で恐れられているから、基本女は寄ってこない。
だけど、1人だけ俺に気さくに話しかけてくれる子がいる。
「恵はもう少し自覚した方がいいよ。自分がカッコいいって。そうしないとせっかく恵を好きになってくれた女の子、傷つけちゃうよ。」
「わかったよ。」
何言ってんだ。
俺は恋が好きなのに………
「いいなぁ、青春だね。恵、自分のことを本当に好きになってくれる女の子は大事にしなさいよ。私も少し考える時にきてるのかもしれないなぁ。」
夕陽を眺めながら涙する恋。
抱きしめたい。
そういう衝動に駆られた。
だけど、どうすればいいのかわからない。
「恋!」
逡巡していると、誰かが恋を呼んだ。
七海さんだった。
夕陽を背にした七海さんはこちらへ向かって走ってくる。
恋は立ち上がり七海さんの方へ歩いていく。
「建人!」
そして、七海さんに抱きつく恋。
「私がいますから。」
七海さんも恋をギュッと力強く抱きしめた。
本当は俺がしたかったのに………
七海さんは昔恋と付き合っていたらしい。
「建人…」
背の高い七海さんに包まれている小さな恋。
その時、七海さんと目があった。
「すみません。私としたことが……子供の前だというのに。」
チェッ、子供扱いか。
七海さんが手を離すと恋も七海さんから離れた。