第1章 始まる
「エッ!今日の最高気温35℃だって。最悪。」
車の後部座席で携帯を弄り、天気予報を確認した。
「京都も暑かったけど、こっちもひどいわね。」
「そうですね。でも、東京校の辺りは緑が多いそうですからこの辺りよりは涼しいはずですよ、お嬢。」
運転手に問いかけるとすぐに返事が返って来た。
この人は私の家に古くからいる使用人だ。
「ふーん、本当かなぁ?暑いと本当何もしたくなくなるのよね。」
私は少し不貞腐れて窓の外を見た。
梅雨明け直後の陽射しは容赦なく照りつけていて、私のやる気を削いでいく。
「お嬢、新調した制服よくお似合いですよ。もしかして手袋も新しいものですか?」
運転手はミラー越しに私を見て褒めた。
「ありがとう。前のより首回りをゆったりめにしてもらったの。肩出す時に出しやすい様にね。それと前はスカートだったけど、動きやすい様にパンツにしてもらったのよ。それとこの手袋は制服を頼んだ時にダメ元で夏用手袋頼んでみたらすんなりOKだったの。」
私は左手だけに手袋を嵌めている。
それは術に関係がある。
そしてその術を使うにはどうしても左腕を出さなければならないのだ。
さらに30分が過ぎ、車が止まった。
「さあ、着きましたよ。ここが呪術高専東京校です。お嬢、確か五条家の嫡男はここの2年、つまりお嬢と同学年ですよ。」
「五条家?あぁ、確か五条悟だっけ?六眼の持ち主でなんかよくわかんないけどすごいやつなんでしょ?」
「ええ。そうですよ。いずれまた五条悟のお話聞かせてくださいね。」
運転手はそう言うと車を降りて後部座席のドアを開けてくれた。
今日から私は呪術高専京都校から東京校へ転入するのだ。
建物に入ると担任の夜蛾先生が待ち構えていた。
「よお!良くきたな。荷物はもう届いているから部屋の方へ運び入れておいたぞ。」
「どうもありがとうございます。」
先生とは転入の話が出てから何度か会って話をしていた。
「いきなりで悪いんだが任務だ。とりあえずクラスメイトに紹介するから着いてこい。」
「は、はい。」
最悪、いきなり任務だなんて。
こんなに暑いのにやる気出ないよ。
そんな事を思いながら先生の後をついて行った。