第19章 掛かる
「恋、泣かないで。ごめんね、本当にごめん。」
「バカ…………」
「「恋!!」」
七海と同時に叫んだ。
恋が倒れたから。
すぐ側に立っていた七海が恋の体を受け止めた。
「恋?大丈夫か?」
すぐさま立ち上がり、恋の様子を見る。
「この一週間、ろくに眠れていなかったんです。」
七海が恋をお姫様抱っこしてる。
「僕のせい……だよね。」
「そうですね。1人では心配だったので家入さんのところで寝泊まりしてたんですけど、高専にいる時以外はボーッとしてましたよ。すみません、家入さんに連絡してください。今から保健室に運ぶと。」
七海に言われた通り、硝子に電話した。
「疲れがたまってたんだろうね、心労がね。」
恋を見た硝子が言った。
今は点滴をしながら、スヤスヤと眠っている恋。
「恋。」
名前を呼び、頭を撫でる。
「しばらく寝かせてやりなよ。」
「わかってる。」
硝子と七海は部屋を出て行った。
恋の寝顔を見ながら頭を撫で、額にキスをした。
何故、この愛しい女を信じてやれなかったんだろう。
僕は最低の人間だ。
廊下に出ると、七海がベンチに座っていた。
「家入さんはタバコです。」
「そうか………七海、悪かった。」
「わかってます。私はいいんです。ただ、恋はひどく落ち込んで泣いてばかりいました。」
「僕が悪いんだ。」
「見ていられませんでした。恋は、あなたの事がよっぽど好きなんだと思いました。大切にしてあげてください。もし大切にしないのなら、本当に奪いますよ。」
真剣な表情の七海。
コイツが冗談なんて言うはずない。
本気だ。
「わかった。もう、二度と泣かせない。」