第19章 掛かる
恋と猪野が教室にいるのが見える。
僕を見つけて廊下へ出てくる恋。
「よお、恋。」
「何?悟。」
冷たい声。
「うわっ、龍さんこわぁい。みゆゆ泣いちゃいそう。」
みゆゆが大袈裟に怖がる。
「恋、お前、七海とはいつから?」
悲しそうな顔をする恋。
「何が?」
とぼけるなよ。
「七海といつからヤッてんの?」
「ヤッてない。何言ってんの?そっちこそ。」
「いや、いいんだ。もうわかってるから。いつからか教えて欲しいだけなんだよ。」
「だからいつからも何も、ヤッてないって言ってんじゃん!ヤッてるのはそっちでしょ?」
苛立つ恋。
「お前がここまで強情だとは思わなかった。もういい、終わりだ。じゃあ。」
これ以上話しても埒があかないと思い、踵を返した。
後ろでみゆゆが恋に話しているのが聞こえる。
「あのね、さとるは恋が浮気してるって泣いてたんですよ。だから慰めてあげたの。そしたらみゆゆと付き合うって。あなたには元カレがいるんでしょ?だから悟はいただきます。ちょっとまってよぉ、さとるぅ!」
僕、みゆゆと付き合うって言ったっけ?
追いかけてくるみゆゆ。
「つーかまーえたっ。」
そう言って僕の腕にしがみつく。
「可愛いねぇ、みゆゆは。」
まっいっか。
あーあ、まさか七海と浮気してたとはねぇ。
ショックだったなぁ。
さっさと帰ろう。
「みゆゆ、ちょっと近道するね。」
「えっ?きゃっ!」
みゆゆを抱っこして2階の窓から飛び降りて、瞬間移動で部屋まで戻った。
そしてまたみゆゆを抱いた。
恋を忘れるために。
その日の夜、七海に電話をかけた。
「あっ七海?お前、僕の女寝とったんだってね。おめでとう。」
「五条さん、誤解です。」
「いいよ、もう。恋はお前にやるから。」
「恋は物ではありません。」
「嬉しいくせに。もう、恋とは終わったから。じゃあ。」
一方的に言って電話を切った。