第19章 掛かる
「何の用?」
「もしもし?悟?」
「だから、何の用?」
こっちの言っている事が聴こえていないようだった。
おそらく、この店で流れている大きな音の音楽のせいだろう。
「今、どこ?」
恋が大きな声を出した。
こっちは聞こえてるっつうんだよ。
仕方なくこっちも大声を出す。
「飲んでる。何か用事?『ねぇ、五条さぁん何やってるんですかぁ?』緊急?」
話の途中でみゆゆが乱入して来た。
まっ、いっか。
「緊急じゃない。」
恋の冷めた声。
「あっそ。」
俺も真似して冷めた声。
すると、みゆゆが俺からスマホを取り上げて通話を切った。
「何やってんだよ?」
「だってぇ、寂しくなっちゃったんだもぉん。」
「みゆゆは可愛いね。」
「誰と比べてるんです?」
「恋ちゃんは最近冷たいんだぁ。」
愚痴る。
「あの、私、五条さんの事が心配で……その、偶然見ちゃったんですぅ。」
「何を?」
「これ………」
そう言ってみゆゆは自分のスマホの画面を俺に見せた。
「これって………アイツら!」
画面に映っていたのは、恋と七海がラブホから出てくるところを撮ったものだった。
酒がかなり入っていたせいもあり、これを見た瞬間俺はもう何も考えられなくなった。
その時俺は、ぷっくりとしたピンク色の唇しか目に入らなかった。
そして、まるで吸い込まれるかのようにその唇に口付けた。
「ごじょ、うさん?」
みゆゆは驚いているようだった。
「ごめん。」
「いいんです。私、五条さんの事が好きです。だから、いいんです。」
顔を赤らめて一生懸命肯定するみゆゆを可愛いと思ってしまった。
思ってしまったんだ。
そして、見つめ合い再び唇を重ねた。