第19章 掛かる
「恵、津美紀のところへ行きなさい。私の分のドーナツ食べていいから。」
「はーい!」
恵は意気揚々と走って行った。
よしっ、これで邪魔者はきえた。
「悟のバカ、大人げない。」
恵が消えると、恋が困った顔でボソッと言った。
「だってぇ、恋ちゃんが恵にばっかり優しくするから。」
「悟はいつまでも子供だね。」
「嫌い?」
「……好き。」
その言葉が聞きたかったんだ。
「僕もだよ。」
結局、恋は僕の事が好きなんだから。
「五条さぁんっ♡」
僕たちが見つめあっていると、可愛い声が聞こえた。
声のする方をみると、大きな胸を揺らしながら一生懸命に走って来るみゆゆ。
「どうしたの?みゆゆ。」
「ハァ、ハァ、?五条さん、探してたんですよぉ。今日は午後から任務って言ってあったじゃないですかぁ。みゆゆ、ずっと探してたんですから。」
息を切らしながら一生懸命に話すみゆゆ。
「ごめんねぇ、みゆゆ。ウチの恋ちゃんがなかなか離してくれなくてね。」
「何言ってんのよ!悟。」
「もぉ、龍さん、お仕事の邪魔しちゃダメですよぉ。」
「いや、私は邪魔なんてしてないんだけど。」
恋があきらかに嫌そうな顔をしている。
「さぁ、五条さん、早くぅ。」
みゆゆが僕の腕を持ち、引っ張っていく。
ああ、胸が当たってるぅ。
やらかいなぁ。
なんて浮かれながらみゆゆについて行った。
はい、僕は大バカ者です。
次の日、討伐を終えて高専に戻ると丁度出勤して来た恋と会った。
「悟、お帰り。」
「ただいま、恋 」
「あ、そうだ。来週、建人と食事に行くから。」
何?七海と?
今までも何回かあったけど、僕としては気が気じゃない。
あいつら、短い間だけど付き合ってたんだよ?
焼け木杭に火がついちゃったらどうするんだよ。