第19章 掛かる
みゆゆがここに来て1ヶ月ほど経った頃の事だった。
「へぇ?もうそんな事までできるようになったんだ。上達が早いね、恵は。」
「うんっ!俺、強くなるよ。」
授業がない日、いつものように恵に稽古をつけてやっていると、恋がやって来た。
まったく、恋は恵に甘いんだから。
「はい、おやつだよ。津美紀と一緒に作ったの。」
今日はドーナツを作ってくれてた。
恋が作るものはいつもとっても美味い。
「ありがとう、恋ちゃん。」
「召し上がれ。」
恋、何で恵にだけあげるの?
僕にはくれないないの?
恵だけ………
そう思いながら、恋の後ろから恵に殺気を飛ばす。
「さ、とる?何やってんの?アンタも食べなさいよ。」
やっと僕の存在に気づいてくれた。
「だって。恋ちゃん、僕にはくれないんだもぉん。恵ばっかりぃぃぃ。」
「またすねてる。」
恵が言った。
あのガキ!
「うるさい!」
恵にキレる。
「子供に怒鳴るな!」
恋は僕にキレる。
「怒った恋も可愛いよ。」
そう言われると恋は照れちゃうんだよね?
すぐこうなるんだから。
怒っても無駄だよ。
「もういいから早く食べて。」
照れた顔を隠すために下を向いてる恋。
もう、可愛いんだから。
「はーい!」
「ちょっと、それ俺のドーナツ。何で取るんだよっ!」
ムカつく恵のドーナツ奪ってやった。
「ちょっと、悟!恵の分取らないで!」
恋が怒る。
「えーっ、だってお腹すいたんだもーん。」
すねる僕。