第19章 掛かる
「はい、わかりましたぁ。次から気をつけます。」
一週間後、廊下を歩いていると使われていない教室の中からみゆゆの声が聞こえた。
覗いてみると、中にはみゆゆと恋それに硝子もいた。
「何やってんの?」
「あっ、五条さぁん。」
声をかけると、真っ先にみゆゆが俺を見た。
泣いてるようだった。
「どうしたの?みゆゆ、こわぁいおねーさん達に怒られちゃったの?」
冗談めかして言ってみた。
「私、えっとお、ミスばっかりで……だからぁ、龍さんと家入さんの事は怒らないであげてくださぁい。」
みゆゆが泣きながら説明する。
おいおい、これっていわゆる新人いびりってやつ?
「まだ入ったばっかなんだから、あんまいびるなよ。可哀想だろ?みゆゆが。」
「何言ってんの?こいつが悪いんだよ。私が預けた書類全部無くすし、恋が頼んだことなんてひとつもやってなかったし。」
硝子が言った。
「お前らも少しは自分で動けば?みゆゆにばっかり押し付けないでさぁ。」
そう言って恋の方を見た。
少し、悲しそうな顔をしていた。
「もういいのよ。ちょっとミスが多くて注意しただけだから。ごめんなさいね、斎藤さん。」
恋がみゆゆに向かって言った。
硝子は腕を組んで不貞腐れていた。
この一件から、僕はみゆゆの事を気にかけるようになった。
「五条さぁん、これよかったら食べてください!」
「うわっ、これ新しく出来た和菓子屋のきんつばじゃん。食べてみたかったんだよね。ありがと、みゆゆ。」
みゆゆも僕によくしてくれるようになった。
それがいけなかった。
僕はなんてバカな男だろう。