第18章 ●嵌める●
「やあ、直哉!久しぶりだね。」
悟くんはこっちを振り返ると満面の笑顔で言った。
いや、違う。
笑ってんのは口だけや。
六眼は笑ってない。
俺を見つめてはる。
「いややわぁ、相変わらずファッサ、ファサのまつ毛やねえ。悟くんにそない見つめられたら勘違いしてしまいそうやわ。」
「僕は見事に勘違いしちゃったけどね。」
「な、何のことやろ?」
一応、とぼけとく。
「あ、みゆゆは完璧だったよ。僕、気づいたの今だから。」
「い、ま?」
「うん。お前が恋と一緒にいるの見たから。それと、みゆゆがお前見てほんの一瞬緊張したからね。普通は気付かないよ。僕を誰だと思ってんの?」
「さすが悟くんやね。」
「恋、ごめんね。ハニートラップだったんだよ。直哉がみゆゆ使ってしかけてたの。僕さぁ、恋と七海がラブホから出てくる写真見せられたんだよ。直哉、あれ合成だったんだろ?」
「うん。上手に出来てたやろ?」
もうこうなったら素直に認めるしかない。
悟くん怒らせたらえらいことなるしな。
「ああ。あれ見た瞬間に頭に血が上って何も考えられなくなったんだよ。」
「お前ら何言ってんの?」
俺の後ろにいた恋ちゃんの口調がいきなり怖なった。
「恋、落ち着いて。」
悟くんが声をかける。
「何でお前の言うこと聞かなきゃいけないの?」
「ごめん。本当ごめん。こんなヤツらに騙されて、お前と七海の事疑って。本当悪かった。」
悟くんが必死に謝ってる。
こんな悟くん初めて見たわ。
「うるさい………おい、そこのつり目金髪!」
「は、はい。何やろ?」
怖くてすぐに返事してもうた。
つり目金髪…あだ名つけられてしもた。
「お前、あの乳牛女と私の事ハメたの?」
にゅ、乳牛女て。
あだ名つけんの上手いなぁ。