第18章 ●嵌める●
「すごいやん。わかってくれたんやね。」
「うん。惚れた男になら喜んでついて行くってね。」
「俺のうしろついてきてくれる?」
「ヤダ。直哉の後にだけはついていけない。」
「何やて?俺もうすぐ1級やで。強い男のうしろついてこいや!」
「私、学生の時に1級になった。」
「えっ?」
「私もです。」
「何やて!?七海くんもかいな!」
「アンタは大好きな禪院のおウチに帰りなさい。ほな、さいなら。」
「待ってや、恋ちゃんの事好きやねん。」
「私は直哉が嫌いやねん。」
関西弁上手やん。
「いやいや、待って。もう、悟くんとは別れたんやろ?それやったらええやん。」
すると、恋ちゃんは俺を手招きした。
何?何の内緒話?
近づくと、恋ちゃんは僕の耳に口を寄せて、小声で話す。
「私は、何をされても何があっても悟が好き。」
そして笑顔。
敵わんなぁ。
やっぱ悟くんには敵わんのかなぁ。
俺、これだけ思われたら浮気なんかせえへんよ。
間男がおるって聞いても絶対せえへん。
悟くん、何しとんねん。
まあ、俺が蒔いた種なんやけどね。
その時、俺らの横を黒い車が通り抜けようとした。
でも、その車はキキーッと急ブレーキをかけて止まった。
「何や?けったいな走り方するなぁ。」
すると、運転手が降りてきた。
何?みゆゆやないかい!
こんなとこで何してんの?
悟くんと討伐任務に行ったんやなかったん?
そんな事を思いながら見ていると、後部座席のドアが開き、見覚えのある白い髪の毛がフワッと風になびいた。
まさか、あれは……
「悟くん?」
そして車から悟くんが降りてきた。