第18章 ●嵌める●
「嘘やろ?恋ちゃん。小学校の時、いっつも一個下の俺の事怒りに来てはったやろ?直哉や、な、お、や。」
「すみませんが、彼女は知らないようですので。」
七海くんがしゃしゃり出てきよった。
「外野は黙っといてや。」
「恋、大丈夫ですか?」
気安く呼び捨てにするな。
俺もちゃん付けやぞ!
「あっ!」
その時、恋ちゃんが大きな声をあげた。
「思い出した?恋ちゃん。」
「直哉だ!頭悪くて力弱くて性格クズの直哉だ!アハハ、どうしたの!?その頭!アハハハ、ちょっと笑わせないでよっ!何で金髪なの?ウケ狙い?アハハ。」
「いや、そんな笑わんでもええと思うけどな。」
「小6の時、弱いものいじめばっかりやってるクズがいるから、何とかしてくれって下の子達に頼まれて仕方なく怒ってたけど、言っても聞かないからお尻蹴ったり、ほっぺつねったり色々してたよね。それで、最後には土下座させたりしてね。」
頼まれた?
仕方なく?
「何や、恋ちゃん嫌々やっとったんかい。」
「私、あんたと違って変態じゃないし。男のこのお尻蹴って喜ぶ趣味はないわよ。」
久しぶりに聞く冷たい言葉。
「ところで、禪院さんとおっしゃいましたか?あの、禪院さんですか?」
七海くんが横槍を入れてきた。
「そうや。あの、禪院や。因みに僕は時期当主や。」
「ねえ、何の話?禪院?直哉って禪院だったの?」
目を丸くしながらきょとんとしてる恋ちゃん。
改めて見るとえらいちっさいなぁ、この子。
「恋ちゃん、俺の名字知らんかったん?」
「うん。だって学年も違ってたし。そもそも興味もなかったし。」
「興味ない?またまた。」
ホンマ、恋ちゃんは素直やないんやから。
「へぇ、あんたがあの禪院ねぇ。びっくり。ところで何でここにいるの?」
「恋ちゃんが悟くんからちょっと可哀想なことされたって小耳に挟んだもんやから。慰めにきたってん。」