第2章 ●忘れる●
少しの間見つめ合ってから彼が再び私の唇に吸い付いた。
今度は舌で私の口をこじ開け、私の舌を求めてきた。
深い、深い口づけ。
タバコの味とお酒の味で頭がクラクラした。
それからの事は正直あまり覚えてない。
全て夢の中の出来事だった様な気がする。
私は和くんに抱かれた。
初めてだった。
彼は酔っていてずっと藍ちゃんって呼んでた。
これでいいんだと自分に言い聞かせた。
終わってから2人とも眠ってしまった。
朝になり、酔いが覚めた和くんは、
「うわっ!お、おま、お前何やってんだ。裸で。」
隣で眠ってた私を見て心底驚いている様だった。
「何って…覚えてないの?私の事藍ちゃんって呼んでたじゃん。」
そう言うと和くんの顔は真っ青になった。
「ごめん。ほんっとうにごめん。俺、酔っ払ってたみたいで、すまない。恋、悪かった。」
裸のまま土下座して謝ってきた。
「何…で謝るの?何したか本当に覚えてないの?」
目から涙がこぼれた。
「いや、した事は何となく覚えてる。夢だと思ってた。すまない」
和くんは申し訳無さそうに下を向いた。
「わ…たし、が望んだ…んだから、いいの。でも、謝ら…ないでよ。惨めになるから」
そう言うと床に散らばった服と下着を拾い集めて急いで身につけ、ドアを開けた。
「恋?」
部屋の前に思いがけない人がいた。
「建人?どうしたの?」
制服姿の建人がいた。
昔は私よりも小さかったのに、今では私の身長を30センチも超えている。
彼は今、呪術高専東京校1年生だ。
「任務でこっちの方に来たから寄ってみたんだけど、恋?何かあったのか?」
建人は心配そうにこちらを見ている。
「ううん、何もないよ。ちょっと私、用事あるからお茶でも飲んでて」
そう言うとそそくさとその場から離れた。
バスルームに入り、鏡を見た。
「うそ…」
鏡に映る自分の姿を見て驚いた。
制服を着てはいるけど、襟がずれており少し胸が肌けていた。
いや、問題はそこじゃない。
肌けた胸元に見える赤い痣。
恐る恐る胸元を開くとそこらじゅうに赤い印が出来ていた。
「これ、キスマーク?でも、良かった。首筋には付いてないから服で隠せる」
などと独り言を呟いてハッとした。
さっききちんと着られてなくて、肌けた部分から赤い痣が見えていた。