第17章 嘲る
気持ち悪い。
胸が苦しい。
締め付けられる。
これって冤罪だよね?
悟が私から去った。
他の女を連れて。
その時、目眩がしてその場に崩れ落ちた。
「先生!恋ちゃん!大丈夫!?」
猪野の声が聞こえた。
この子も私の事ちゃん付けするんだよな。
こんなときにどうでもいいか。
「ハァ、ハァ。大丈夫よ。ちょっと気分悪くなっただけだから。」
「で、でも、硝子さん呼んで来ようか?」
慌てる猪野。
「恋!」
その時、廊下の先から私を呼ぶ声がした。
「け、んと?」
建人だった。
「どうしたんですか?」
走ってきたのに息も切らさずに言った。
「あの、いきなり倒れたんです!」
猪野が教える。
「待って!倒れてはないから。ちょっと気分悪くなっただけだし。もう治ったから大丈夫。」
そう言って立ち上がる。
「本当に大丈夫ですか?」
「うん。それより建人どうしたの?」
「呪術師に戻るので夜蛾学長に挨拶に来ました。」
夜蛾先生は学長になった。
「そうなんだ。あっ、猪野!追試の続きやりなさい。」
「ゲッ、覚えてたのか。」
「当たり前でしょ!早く行きなさい。」
「生徒ですか?」
そこで建人が口を挟んだ。
「はい。1年の猪野琢真です。」
「私は七海建人。サラリーマンをしていましたが、今日から出戻りました。よろしくお願いします。」
「こ、こちらこそよろしくお願いします。」
猪野がかしこまってる。
建人、素敵だもんねぇ。
わかる、わかる。
「さあ猪野、早く。」
猪野を教室へ入らせて戸を閉めた。
「恋、何かありましたか?」
猪野がいなくなると、建人が静かに言った。
「うん。建人、硝子のとこで待ってて。これ終わったら行くから。」
「わかりました。では、後で。」
建人は静かに去った。
教室に戻ると猪野がニヤつきながらこっちを見ていた。