第17章 嘲る
「五条さんどこにいるかご存知ですか?」
「みゆゆが連れて行った。」
「え?今から任務なのに。」
「任務に行くって言ってたけど。」
「あ!まただ、斎藤のやつ!私の仕事を横取りして。うーん、どうしたものか。」
伊地知は悔しそうに唸りながら職員室を出て行った。
「恋、あの子五条のこと狙ってんじゃない?」
硝子が言った。
「そうかもね。」
「余裕だね。」
「人の恋心をとやかく言う権利はないかなぁって。」
それは本当に心からそう思う。
「でも、五条があっちになびいちゃったらどうするの?」
「私のところに戻るならいいけど。戻らないなら相当凹むだろうね。」
「じゃあ、浮気なら許すって事?」
「悟に何されても嫌いにはなれないから。でも、許すかどうかはまた別問題。」
「そりゃそうだ。もし浮気したら思いっきり蹴り入れてやったらいいよ。」
「何だか楽しそうだね、硝子。」
「いつも最強とかほざいてる五条が思いっきりお尻蹴られてるの想像したら笑えてきた。」
その後、硝子と食事をしていると建人から電話が掛かってきた。
「もしもし建人?元気?」
「はい、元気です。恋は?」
「私も元気。どうしたの?」
「良ければ来週食事でもどうですか?」
「いいよ。予定確認してメールするね。」
「はい、よろしくお願いします。では。」
「はーい、バイバーイ。」
建人は灰原の一件がよほどこたえたらしく、卒業後は術師にはならずに一般企業に就職してサラリーマンになった。
サラリーマンになったからといっても友達関係は続いていた。
「七海?」
「うん。来週、食事しよって。」
「へぇ。五条キレない?」
「キレないよ。今までも何度か建人と食事行ったけど何ともなかったし。」
「ふーん。そんなもんかねぇ。」
そう言うと硝子はワインを飲んだ。
「何?」
「だって、アンタと七海は付き合ってたんだよ?」
「そりゃそうだけど。あんなの…もう何年も前の話だし。それに建人とは子供の頃からの友達だから。」
「七海って女いないの?」
「さあ?聞いたことない。いてもおかしくないよね。かっこいいし、モテそう。」
「あの年であの見た目で女いないんなら逆に怖いね。」
そしてまた硝子はワインを流し込んだ。