第17章 嘲る
「恵、津美紀のところへ行きなさい。私の分のドーナツ食べていいから。」
「はーい!」
恵は意気揚々と走って行った。
「悟のバカ、大人気ない。」
「だってぇ、恋ちゃんが恵にばっかり優しくするから。」
「悟はいつまでも子供だね。」
「嫌い?」
「……好き。」
「僕もだよ。」
結局、この男には敵わない。
「五条さぁんっ♡」
私たちが見つめあっていると、鼻にかかった猫撫で声が聞こえた。
声のする方をみると、大きな胸を揺らしながら一生懸命に走って来る女が1人。
「どうしたの?みゆゆ。」
悟までみゆゆって呼んでるし。
「ハァ、ハァ、?五条さん、探してたんですよぉ。今日は午後から任務って言ってあったじゃないですかぁ。みゆゆ、ずっと探してたんですから。」
息を切らしながらやはり鼻にかかった声で話すこの女。
最近、補助監督としてやってきた斎藤美由だ。
自分のことをみゆゆと呼ぶ。
私と硝子の天敵。
「ごめんねぇ、みゆゆ。ウチの恋ちゃんがなかなか離してくれなくてね。」
「何言ってんのよ!悟。」
「もぉ、龍さん、お仕事の邪魔しちゃダメですよぉ。」
「いや、私は邪魔なんてしてないんだけど。」
「さぁ、五条さん、早くぅ。」
私の話なんて聞きゃしない。
斎藤は悟の手を取り、さっさと行ってしまった。
職員室に戻ると硝子が机に突っ伏していた。
「あー疲れた。お腹空いた。」
「硝子、また目の下にくま出来てる。」
「昨夜徹夜だったから。」
「お疲れさま。」
硝子はズルして2年で医師免許を取り、高専所属の医師となった。
反転術式が出来る貴重な術師ということもあり、治療の依頼が殺到しているのだ。
「龍さーん。」
「なあに?伊地知。」
伊地知は補助監督だ。