第16章 ●落ちる(夢主ちゃんの場合)●
恥ずかしくて顔が熱くなる。
悟の手を取ってさっさと店を後にした。
「悟のバカ!信じらんない。何であんなとこでするの?」
しばらく歩き、路地に入ったところで止まった。
「だって我慢できなかったんだもん。」
悪びれる様子もない悟。
「あんなに人がいる所で。する?普通。」
「じゃあ、人が居なければいいの?」
そう言うと悟は私の腰に手を回して引き寄せ、キスをした。
「………そういう問題じゃない。」
「照れてる?可愛い。」
「いじわる。」
「僕のこと嫌いになった?」
「ううん。」
「好きだよ、恋。」
「私も。」
ただのバカップルの痴話喧嘩。
それも悪くない。
その後また少し買い物して、アイスクリーム屋さんに入った。
悟は先に食べ終わり、トイレに行った。
私が1人アイスを食べていると、見知らぬ若い男が声をかけてきた。
「おねーさん、何してんの?」
「……アイス、食べてる。誰?」
「俺?俺は、たっくんでーす。」
「おねーさんっていうか、キミ、いくつ?まさか中学生じゃないよね?」
私をマジマジと見て男が言った。
「義務教育は数年前に終わってる。」
「良かったぁ。流石に中学生に手出したらまずいからさぁ。良かったら俺と遊びに行かない?カラオケとかどう?」
男が私の前の椅子に座り、顔を覗き込む。
これってナンパ?
どうしよう。
アイス顔に塗りつけてやりたい。
そして、その顔を蛇に舐めさせたい。
「あー、非術師ボコったら怒られるしなぁ。」
「何?ひじゅつし?何言ってんの?おねーさん。」
「ヤバッ、心の声が…」
「まあ、とにかくカラオケ行こうよ。」
男が私の手を握った。
「イイねえーカラオケ!僕も混ぜてよっ!」
悟が戻ってきた。
わざとサングラスをずらし、青い瞳で男を睨みつけてる。