第16章 ●落ちる(夢主ちゃんの場合)●
紆余曲折の末、ようやく悟と恋人同士になった。
色々あったな。
初め私に彼氏がいた。
それから禁欲するハメになって。
悟は他の女とヤッちゃって。
またまた禁欲して。
最後には私が悟の親友にやられちゃって。
それからようやく付き合うことになり今に至る訳で。
長かったなぁ。
隣を見上げる。
黙ってたらカッコいいんだけどなぁ。
なんて贅沢な悩み。
私と悟とじゃ釣り合いがなぁ、なんて未だに考えてしまう。
すると悟が頭を鷲掴みにしてきた。
「ちょっと何するのよ。」
「僕に見惚れてたの?」
悟はこの間からいきなり僕って言うようになった。
「違う。雲見てただけ。」
「素直じゃないなぁ。」
素直になったから悟と付き合ってるのよ?
夏油にされた事は許せない。
だけど、悟に上書きしてもらった。
嫌な事のすぐ後にいい事をしてもらった。
だから、私は生きていける。
「好き。」
小さく呟いた。
「えっ?何?」
「何でもない。」
「俺も好きだよ。」
聞こえてたんじゃない!
「もぉっ!悟のバカ!」
手を離して先を歩く。
「バカな僕が好きなんでしょ?」
バカだけど、強くて、かっこよくて、優しくて、夢がある悟が好きなのっ!
心の中で叫んだ。
「私、悟について行くから。邪魔になっても捨てないでね。」
後ろを振り返って言った。
「捨てるわけないじゃん。」
そう言って私に走り寄ってくる悟。
今日は悟とお買い物デート。
「よしっ、こんなもんかなぁ。」
色々買い込んだ。
悟は荷物持ち。
「恋、お腹すいた。」
「そうだね。何か食べよっか。」
近くのファーストフード店に入った。
「隣のテーブルに若い女の子2人がヒソヒソと話しているのが聞こえる。」
「超イケメン!カッコイイ!何あの女!」
食べ終わり、席を立とうとした時だった。
「恋!」
「なに……」
悟に名前を呼ばれたかと思ったらいきなりキスされた。
「「キャーッ!!」」
隣の女の子たちの悲鳴が聞こえる。