第15章 ●落ちる●
目を逸らさずに恋の体を見る。
白い肌に浮かぶ赤いキスマーク。
それが至るところにある。
肩の所には血の滲んだ酷い噛み跡。
「あばら3本やられてる。」
「3本も…腕折った仕返しにやられたって言ってた。」
とにかく、全身がキズとアザだらけになっていた。
「硝子、頼む。」
部屋を出ると、歌姫が駆け寄って来た。
「五条!ごめん、私がついておきながら。」
「いいよ。歌姫のせいじゃない。傑に敵う奴なんてそうそういない。」
「あの子、凄かったんだから!夏油に頭突きして、玉蹴って、寝技で関節キメて腕へし折ってた。」
歌姫が興奮気味に言った。
「そうなんだ。アイツ、強くなっただろ?」
自分のことのように誇らしい。
その後、俺は1人屋上へとやって来た。
しばらくして夜蛾が静かに近づいて来た。
「何故追わなかった?」
「それ……聞きます?」
「……いやいい、悪かった。」
「先生、俺強いよね?」
「ああ、生意気にもな。」
「でも、俺だけ強くても駄目らしいよ。それと、俺が救えるのは他人に救われる準備がある奴だけだ。」
恋は俺の大切な女。
傑は俺の大切な親友。
傑は救えなかった……
「終わったよ。」
硝子が知らせにきた。
「治った?」
「うん。全部綺麗になった。」
1人で部屋に入ると恋はベッドに腰掛けていた。
硝子が持ってきた新しい服を着ている。
「調子どう?」
「だいぶいい。もうどこも痛くない。」
引きつった笑顔。
「おいで。」
恋の前に立ち、両手を広げた。
そして、俺の胸に柔らかな温もりが触れた。
「悟、弱くてごめん。」
か細い声で言った。
「何言ってんの?頭突きして金玉蹴って関節キメた女が。」
「えへ」
「照れんなよ。」
「夏油、どうなった?」
しばらく間を置いてから恋が言った。
「盤星教乗っ取ったらしい。アイツはバカだね。」