第15章 ●落ちる●
「悟、その電話には出たほうがいい。」
傑が言った。
何故だか胸騒ぎがした。
ポケットから携帯を出す。
歌姫からだ。
今、アイツは恋と一緒にいるはず。
「もしもし歌姫?どうした、恋は?」
「五条、落ち着いて。夏油が恋を……今、高専に運んでるから。硝子に診てもらう。」
「歌姫!恋は無事なのか?」
「おそらく命に別状はないと思う。だけど…………夏油に…………犯された。」
「傑!」
叫ぶ俺。
「私はね、ずっと恋が好きだったんだよ。だけど、彼女は君を選んだ。だから、ね。」
そう言って傑は雑踏に消えた。
恋!
早く、恋の元へ!
急いで高専に戻ると、丁度恋も帰ってきた。
「恋、起きろ!恋!」
必死に声をかける。
「さ、とる?」
やっと目を覚ました。
「あぁ、俺だよ!恋、よく頑張ったな。お前、さっき歌姫とヘリで高専に着いたんだよ。今から硝子に治療してもらおうな。」
頭を撫でてやると、嬉しそうに目を細める恋。
「ありがと。あーっ、いったーい。」
「痛いってどこが?」
「最初、夏油はあんまり本気じゃなくって、私が腕折ったから、それでね、怒らせちゃって。仕返しだってあばら折られちゃった。」
エヘヘって笑う恋。
「そこ、笑うとこじゃないだろ。」
優しく怒る。
「五条、準備できた。」
白衣姿の硝子が来た。
「さとる?ごめん…今日、だったのに…私こんなで、ごめん。」
「謝るな!お前は何も悪くない。」
指で恋の涙を拭う。
治療の為、一度薬で眠らされた恋。
「五条、見とく?」
硝子が言った。
「ああ、頼む。」
硝子が恋の服……ボロボロに破かれた服を脱がせる。
「だいぶひどいね。」
顔を顰めた硝子。