第15章 ●落ちる●
愛の言葉を囁くと、恋は初めて会った時から悟が好きだったって言ってくれた。
嬉しすぎ。
キスしようとしたらまだこのままでいたいって言われた。
愛しくて頭の後ろに手を置いてしっかりと抱きしめた。
よっぽど寂しかったのかと聞けば、俺の予想だにしない答えが返ってきた。
後、2ヶ月半も我慢しろだと?
正直言ってキツイ。
だけど、これを耐え抜けば明るい未来だ。
俺は2ヶ月半耐える決心をした。
それからは余計な事を考えないよう、今まで以上に術を極める事に集中した。
そしたら俺、どうやら最強になったみたい。
2ヶ月と少し経った頃、灰原が死んだ。
俺は奴らの任務を引き継いだ。
行ってみると、明らかに奴らには荷が重い討伐だったという事がわかった。
「ただいま。」
翌朝、高専に戻ると恋が出迎えてくれた。
「大丈夫?恋。」
「さとるぅ、灰原が死んじゃったよぉ。」
今にも泣き出しそうな顔。
「仇はちゃんとうってきたから。泣かないで。」
「さとるぅ。」
泣いちゃった。
そんな顔されたら我慢できなくなっちゃうじゃん。
「おいで。」
恋を抱きしめて頭を撫でた。
そしたら、泣き止んだ。
恋との約束の日まであと一日になった。
アイツをその気にさせなきゃいけない。
ムードは大切だ。
明日は高級ホテルのスイートを押さえた。
そうだ、部屋に花を飾らせよう。ピンクの薔薇はやめて白や水色の花を。
そうだ、バブルバスがあるから一緒に泡風呂入ろう。
そうだ、恋の好きなものをルームサービスで頼もう。
そうだ、照明は落として間接照明にしよう。
そうだ、恋の好きな音楽をかけよう。
俺は自分のことで頭が一杯だった。
親友が苦しんでいたのに気づいてやれなかった。