第15章 ●落ちる●
親友の凶行。
俺の大事な人が傷つけられた。
やっと結ばれようとしていた大切な日に。
恋は今、硝子の治療を受けている。
校舎の屋上で空を見ながら終わるのを待つ。
2ヶ月半前、久しぶりに恋の部屋へ行った。
ガトーショコラを食べていると硝子が呼び出され、出て行った。
今、ここには俺と恋の2人きり。
この久しぶりの状況に胸が高まり過ぎて張り裂けそうになった。
「ガトーショコラまだあるけどいる?」
恋が言った。
少し声が震えていた。
「うん。」
「ちょっと待って。」
思わず、立ち上がった恋の手首を掴む。
そして、ずっと聞きたかった言葉をねだる。
「ねぇ、悟って呼んでくれない?」
「ヤダ。」
拒否されてもまた懇願する。
それでも悟とは呼んでくれない。
「俺の事好き?」
たまらず聞いてしまった。
「キライ。」
即答されると凹む。
「私は悟が大っ嫌い。」
あれっ?今のって…もしかして。
もう一度呼んで欲しいとお願いしたけど
ヤダって言われた。
「どうして?」
「どうしても。」
「いじわるぅ。」
「どっちが。」
このやりとり、前にもあった気がする。
その後、可愛いって言ったら可愛くないって言われ、また同じような問答の繰り返しになった。
様子がおかしい。
どうしたのか聞いたらミサト先輩の事がまだ引っかかっていたらしい。
それって俺の事が嫌いになったわけじゃわないってこと?
期待してしまう。
目をうるうるさせる恋。
瞼を閉じれば頬を一筋の涙が伝った。
ああ、やっぱり俺はこの女が好きだ。
掴んでいた手を離し、指で涙を拭ってやる。
「泣かないで、恋ちゃん。俺は、お前の方が好きだよ。初めて2人で任務に行った時からずっと恋ちゃん一筋。」
そう言ったけど、なかなか信じてもらえずにだらだらと長い言い訳を並べ立てた。
そして見つめる。
再び涙を流す恋。
「おいで。」
立ち上がり両手を広げると、恋の方から近づいて俺の胸に寄り添って来た。
腕を恋の背中に回して優しく抱きしめた。
「好きだよ、恋。」