第14章 ●逃げる●
「おつかれ、恋。」
2日後、無事に討伐を終えた私たち。
「案外、楽勝だったね。歌姫ちゃん。」
歌姫ちゃんの事は、家同士の付き合いがあり子供の頃から知っていた。
「楽勝?私はまあまあ頑張ったわよ。恋、強くなったわね。」
「本当?ありがと。」
「ところで、五条と付き合ってるの?」
「付き合ってはないよ。」
「そうなの?アイツ、恋に告白されたって言ってたけど。」
「あのバカ……ムカつくから付き合うのは保留に して禁欲させてるの。」
「アハハハ、一生禁欲させてればいいわよ。」
歌姫ちゃんが大声で笑った。
その時、私の携帯が鳴った。
「もしもし?硝子?どうしたの?」
「夏油が任務先の村人大勢殺して逃げてるらしい。」
「硝子、何言ってんの?」
「信じられないかもしれないけど、そういう報告が上がってるって。さっき夜蛾が。」
「わかった。すぐそっち戻るから。」
そう言って電話を切った。
隣にいる歌姫ちゃんのところにも知らせが入ったようだった。
2人で車のところまで戻ると、異変を感じた。
「恋!」
「歌姫ちゃん!」
補助監督さんが車の横に倒れていたのだ。
「大丈夫、息はある。気絶してるだけみたいね。」
歌姫ちゃんが補助監督さんの状態を見た。
「歌姫先輩も一緒だったんですね?」
「「夏油!!」」
2人の声が重なった。
「恋、好きだよ。私と一緒においで。」
夏油が私を見つめながら言った。
「ヤダ。人殺しは嫌い。」
すると夏油が私に近付いて抱き上げた。
「夏油!」
叫ぶ歌姫ちゃん。
私は咄嗟に頭突きを喰らわせた。
すると夏油は私を離した。
その隙に今度は股間を思いっきり蹴り上げた。
「おっ、こ、これは、また強烈な……」
その場に倒れ込んだ夏油の右腕を取り、関節をキメた。
「ギブ、ギブ」
必死にうめいているのを無視して力を入れ続ける。
そして、遂に骨が折れた。
「いやぁ、参ったなぁ。随分と強くなったものだね。気の強い恋も好きだよ。」
「ぎもぢわるぅ。」
思わず出た本音。
「そんなに悟が好きかい?」
「うん。好き。大好き。めちゃくちゃ好き。超好き。死ぬほど好き。悟が好き。」
ニコニコしながら言ってやった。