第14章 ●逃げる●
「夏油、どう言う事なの?」
「今から灰原のところへ行く。君も行くかい?」
「うん。」
「灰原!どうして?起きてよぉ、灰原!」
ベッドに横たわる灰原。
文字通り死んだように眠ってる。
「恋、灰原は死にました。」
側にいた建人が力なく言った。
彼もボロボロだった。
「建人!あなたは大丈夫なの?早く手当しなきゃ。硝子は?そうだ、灰原も硝子に診てもらえば!」
私は、完全に取り乱した。
「よしよし。落ち着こうか、恋。」
夏油に頭を撫でられる。
何故か落ち着く事が出来た。
「恋、ここに座って下さい。」
建人に言われ、彼の隣に腰掛けた。
「なんてことはない。二級呪霊の討伐任務のハズだったのに。クソッ、アレは1級案件だ。」
建人が呟いた。
「今はとにかく休め、七海。硝子が戻ったら治療してもらえ。任務は悟が引き継いだ。」
夏油が言った。
「もう、あの人1人で良くないですか?」
建人はそう言うと天井を見つめた。
夏油と一緒に建人を部屋まで送った帰り道。
「術師というマラソンゲーム、その果てにあるのが仲間の屍の山だとしたら?」
夏油がまた不気味に呟いた。
「夏油?大丈夫?」
灰原の事がこたえたのかと思った。
「いいや、何でもないよ。おやすみ。」
「おやすみ。」
翌朝、悟が帰ってきた。
「ただいま。」
「お帰り。」
「大丈夫?恋。」
「さとるぅ、灰原が死んじゃったよぉ。」
昨夜の灰原の姿を思い出して辛くなった。
「灰原の仇はちゃんとうってきたから。泣かないで。」
「さとるぅ。」
「おいで。」
少しだけ、悟に甘えた。
頭撫でてくれた。